弁当屋さん

 

grammanme祖母が亡くなってから、もうすぐ五年が経つ。九十歳を超えていたし、自分では立つこともできなくなっていたから、よほどきつかっただろうなと思う。耳が遠くなり、身体が動かなかった分、聞いてくれる人があれば、いつも同じ話を繰り返していた。

 

あれは、弟が生まれて、母が妹を身籠っていた時で、私が三歳くらいの時だったと思う。私は祖母と二人で列車に乗っていた。

その前の年に、弟が生まれた後、赤ん坊とまだ小さい子供の世話で忙しかった母の為に、祖父母は私をしばらくの間預かったことがあった。初めて祖父母に連れられて、通り過ぎる小さな町や田畑を眺めての、急行列車での長い旅だったが、預かっていた間も私は泣くこともしなかったので、再び祖母が迎えに来たのである。

私と自分の為におにぎりとお茶を持参していた祖母は、昼時に列車が途中駅に着いた所で、お茶を取り出した。

その時、突然私が開いた窓からのめり出し、何かを探し始めた。あちらを見て、こちらを見る。挙げ句には開いているドアの所まで行って見回す。席まで戻ってくると、また身体をのり出した。

「どこにおるとかね。すぐに出るとに。」

何事かと祖母が思っているうちに、とうとう探していた人を見つけた私は手を大きく振った。

「弁当屋さーん。」

走ってきた弁当屋にいいとは言えず、祖母は仕方なく弁当を一つ買った。

美味しそうに弁当を食べている私を見ながら、祖母は、前回、同じ駅で弁当とお茶を買ったことを思い出した。幼い私が覚えていたことに感心したという。

 

祖母の記憶にある自分がずいぶん賢い孫になっているようで面映かったが、何度も同じ話を聞いているうちに、あの話の中の子供になったような気がしたものである。

 

In English

 

 

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